実写を参考にアニメイラストを描くとき、キャラクターが可愛くならないケースがよくあります。デフォルメキャラクターの解剖を考えることは、こういったよくある問題に洞察を与えてくれるでしょう。
明らかなことは、デフォルメキャラクターは言葉の如く、カタチが意図を持って誇張されているということです。その意図は多くの場合、作品(絵)が鑑賞者に対して与える印象の操作にあります。

典型的な美少女キャラクターから私たちが感じる印象は、私たちが子供や赤ちゃんに抱く印象と近いものがあります。たとえそのキャラクターが成人に近い年齢であっても、多くの場合典型的な美少女キャラクターの頭蓋は成人頭蓋というよりも小児頭蓋に近いと言えるでしょう。
顔のパーツが全体的に下に寄る、広いおでこ、大きな瞳、といった小児頭蓋の特徴は”かわいい”という印象を誘発します。

成人頭蓋の特徴である発達した顎や、顔のパーツが縦に伸びる感じは、典型的な美少女キャラクターには少々大人びた印象を与えすぎてしまうため、多くのケースでは意図的に避けられます。

それなり練習を積んだ人なら、このような変形や誇張を無意識のうちにやっていることが多いです。しかしプロでも、長年美少女キャラクターしか描いてこなかった人は、成人した男性キャラクターや大人な雰囲気の女性が描けなくなるケースはよくあります。手癖が小児頭蓋の比率に固定化されるためです。こうした手癖から脱却し、様々な年代のキャラクターを描き分けるには意識的な訓練が必要になります。